美味しいものって何でしょうね?

先日、ヨーロッパに出張に行かれた娘婿さんから、知り合いがフォワグラの缶詰をおみやげにもらったそうで、食べ方を教えてあげました。

昔は僕もフォワグラが大好きでした。学生時代、吉祥寺のルボンビボンという店で食べて以来、とにかくフォワグラが大好きで、パテであったり、ソテーであったり、牛フィレ肉とのミルフィーユであったり、とにかく何でも好きでしたが、ある事件以来、あまりり好きではなくなりました。

その事件は15年以上前、ニューヨークのセントレジスという五つ星ホテルのレストランから始まりました。日本からの客人の接待をしたこのレストランでいただいたのが、フィレとフォワグラのミルフィーユでした。最高級の牛フィレ肉とフォワグラが互い違いに数枚重ねてある料理で、フォワグラの濃厚な味とフィレの旨味が最高に溶け合う絶妙な料理だったんです。美味しかった!

しっかりした赤ワインと一緒に十分に堪能したのですが、問題はその後。マンハッタンにも日本の地酒が飲めるところがあるという話題になり、ではお連れしようということになったのです。

「あの料理の後で日本酒はないだろう!」と思いましたが、しかたがない。店を移り、乗りで日本酒をたくさん飲みました。

すると、胃の中で、フランスと日本が戦争です。そして、フランスは負け、以来、僕はフォワグラを受け付けなくなったんですね。(悲しい!)

 

お客さんにそんな昔話をしていると、冷蔵ケースの中に「〆張鶴」があるのを見つけられ、超ぬる燗でほしいとおっしゃいました。新潟の酒で、僕が好きだからおいています。悪魔のようにさらっと飲みやすい。とにかく、料理のじゃまをしない。

そんな悪魔のせいじゃないですが、お客さんとの話は進み、美味しいものって何だろう、という話になりました。

一口に美味しいものといっても色々あります。でも、一つだけ選べといわれたら、アナタなら何を選びますか?

僕ならこう思うんです。それは、素材に塩して焼いたものになるのではないか。おいしいものはシンプルです。最近お出しした料理の中では、「ブリカマの塩焼き」「特大シイタケの塩焼き」なんかです。

「タン塩」も美味いですね。ある程度厚めにに切った方が歯ごたえがありジューシーで美味い。今度、国産牛のタンを仕入れて、厚く切って塩焼きにしてお店で出そうと思います。

私見ですが、結局、美味しいものって何かと聞かれたら、そういうシンプルなものになる。美味しいものの原点だと思うんです。素材に塩しただけの焼き物。小ぶりでしっかりしたジャガイモと、ベーコンとタマネギを、鉄鍋でゆっくりと炒めたもの。マッシュルームのおいしさ、など、他にも色々。

以前、白葱の串焼きを食べられたお客様に「こんな旨い葱は初めて食べた」と褒めて頂いたことがあります。「塩を打つ」と言いますが、実は塩を打つという単純な仕業のときがいちばん緊張するんです。素材の気持ちになって、また、おいしくなれという心を込めて、打つ。料理はシンプルなものが一番難しいのです。

こういう単純な美味しいものは世の中にたくさんあります。しっかりと手を加えたものも捨てがたいですが、美味しいものの原点を忘れず探求するのも、また楽しいものです。